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アンの故郷を旅する カナダ・プリンスエドワード島

彩の島

 カナダ・トロント空港から70人ほど乗ればいっぱいになる小さな飛行機で約2時間。ちょうど日付が変わる深夜に、プリンスエドワード島のシャーロットタウン空港に到着した。この島は、ファンならば誰でも一度は訪れたいと思う「赤毛のアン」の舞台。もちろん「アン」関連の見どころは満載だが、この島の「売り」はそれだけではない。食や自然、人々の暮らしなど、さまざまな島の魅力をお伝えしよう。

(時事通信社 佐藤信人)

 プリンスエドワード島を訪れたのは9月初め。まだ猛暑が続いていた日本から来ると、夜は涼しく、湿気も少ない快適な気候だ。朝起きると、前日とは打って変わって雲一つない快晴。天気の神様に感謝しながら、島巡りに出掛けた。

 車で旅を始めて真っ先に感じるのは、この島が「色彩の島」ということだ。アンがマシューと初めて出会った後、馬車でグリーン・ゲイブルズに向かうとき、「どうして道が赤くなるの」と聞いたように、島はほとんど全て赤土でできている。どこまで掘っても赤土だそうで、海岸の砂浜も赤みがかっている。

 そして至る所に黄色いセイタカアワダチソウや白いレースフラワーが咲き、夏の終わりの象徴のフェアウェルサマーも紫色の花を付けていた。島では、野バラやヤナギラン、デージー、キンポウゲなど、冬を除いて色とりどりの花が絶えることがない。

 道の左右に広がる広大な畑は、この島名産のパッチワークのようにきれいに区画され、ジャガイモや麦、牧草、大豆、菜種など別々の作物が育てられる。連作をすると土壌がやせるため、島の条例で一つの畑では毎年作物を順番に変えることが義務付けられているそうだ。

 訪れたときは緑の濃淡が鮮やかだったが、季節が違えば、ジャガイモの花の白と菜種の黄色、草の緑などが美しいコントラストを描くという。

 道路脇に真っ赤な実を鈴なりに付けたナナカマドの木が立ち並んでいた。島の秋は早い。島の人が「ナナカマドの実が、枝がしなるほどたわわに付くと、その年の冬の寒さは厳しくなると言われているんですよ」と教えてくれた。

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