2014.09.01

パブリックからオンプレミス・クラウドへ:ヴイエムウェアの日本戦略を追う

富士通やネットワンシステムズなどへの期待を語るパット・ゲルシンガー氏(CEO、VMware:VMworld2014にて筆者撮影)

今年もシリコンバレーで「秋の展示会シーズン」が始まった。この時期、インテルやオラクル、セールスフォースなど大手IT企業が次々とプライベート・ショーを開催する。ここ数年、こうした展示会では米国で急速に広がっているクラウドやモバイル・ビジネスの戦略発表が繰り広げられる。今回はシーズンのトップを切って開催されたVMware(ヴイエムウェア)社の「VMworld 2014」を見ながら、昨今注目を浴びるオンプレミス・クラウドを追ってみたい。

仮想化インフラを提供するヴイエムウェア

今年のVMworldでは、EVO:RAILが大きな話題となった。これは、電源を入れてから仮想マシンが起動するまで「たった数分」という従来の常識を破る製品だ。仮想マシンとは、クラウド・サービスを支える基本技術。この製品で、クラウド・システム導入を敬遠していた中小企業も、容易にクラウド・サービスを構築できるようになる。

とはいえ、そもそも「ヴイエムウェア」という会社自体を知らない読者は多いだろう。すこし同社について解説しよう。

企業は、オフィス内に置いたサーバーにアプリケーションを入れて、卓上のパソコンで利用してきた。現在でも多くの企業がこの「オンプレミス」とよばれる方法を使っている。これに対して、クラウドはネット経由でどこからでも高度なアプリケーションを利用するビジネス・モデル。

たとえばパブリック・クラウドでは、データセンターにある大量のサーバーを複数のユーザーで共有するため効率が良い。費用は基本的に利用した情報処理サービスの量に比例する。しかも、社内に設備がないので保守管理のコストが低減できるメリットもある。

こうしたクラウド・サービスを提供するためには、様々な状況に合わせて自由にサーバーの処理能力やネットワーク設定、記憶容量などを割り当てる必要がある。これを可能にするのが「仮想化技術(バーチャライゼーション・テクノロジー)」と呼ばれるもので、ヴイエムウェアはこうした仮想化インフラ/ソリューションを総合的に提供している。

同社の資料によると、ユーザーは50万社以上、事業パートナーは7万5000社を超え、13年度の売り上げは52.1億ドル(約5,400億円)。日本でもNTTコミュニケーションズや富士通、NECなど多くのITプロバイダーが同社の仮想インフラを使ってパブリック・クラウドやプライベート・クラウドを提供している。

ちなみに、複数の企業や個人が共同利用する方式をパブリック・クラウドと呼び、単独企業/団体が構築するクラウドをプライベート・クラウドと称している。現在米国では、アマゾン・ウェブ・サービシーズ(AWS)、マイクロソフト、グーグルがパブリック・クラウドの御三家と呼ばれている。御三家はいずれも、独自の仮想化インフラを構築しサービスを提供している。一方、ヴイエムウェアは大手ベンダーとして、広く仮想化インフラを販売している。

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